兎と空想う

 

朝日が昇るまどろみの中

かなぐり捨てた美の知覚を呼び覚ました。

身近で遠いおとぎの国では

全土に散らばる叡智が、泡のようにいくつも浮かんでいる。

一つの泡がはじけ、泡から泡へ音が共鳴してゆく。

その音で私はある事を思い出した。

なんでも回帰を夢見た乙女は

朝日を眼に映し、願望に含まれる引力に乗って空を滑ると、

一夜で世俗を星に変えたという。

愛しの人よ

私があなたに映せるものは一つしかありません。

それは純白な硝子と沈黙から成る詩編です。

きっと新しく生きるあなたの妨げにはならないと思います。

というのも、今では遠い昔の空想ですから。